空’s diary

大学3年生。徒然なるままに。

「社会階層 豊かさの中の不平等」原純輔・盛山和夫

今回は、読んだ社会学の文献を私なりにかみ砕いてまとめる第一弾ですー

 

「社会階層 豊かさの中の不平等」

 

この本は、社会学の実証研究(複数の仮説を実証データによって検証すること)の名著の一つであるため読んでみた。(1999年 原純輔・盛山和夫

ゆっくりまとめながら読み込んで1週間ほどで読めた。

扱っているデータは、1995年のSSMのため、現在の状況をデータが表しているわけではないが、階層研究の方法論やプロセスはとても参考になるし、目に見える貧困がなくなり「階層」が人々の間でリアリティを失った今、階層研究が今後社会学の中で栄えていくには、どういう視座で研究したらいいのかを示唆している点で、非常に読む価値のある本である。

本書は、これまでの諸理論が直面している困難を乗り越える新しい社会階層研究の視点を示すことが課題。

→概念と実証作業の往復!

 

1章:階層研究の課題

まとめ

マルクス主義や近代化論という、これまで階層研究を主導してきた巨大理論が有効性を失った。

②主要テーマの「貧困」が先進国で実質的に解決されてしまった。

③女性の社会進出に伴い、世帯単位の階層概念へ疑問が呈された。

④そもそも「階級」「階層」とは何かに対し、有効な理論がない。世代間移動には「構造移動」と「循環移動」の2種類がある。

 

1章で押さえておくべき点

・構造移動と循環移動
構造移動とは時代の変化に伴う産業構造の大きな変化によってもたらされる人の階層間移動で、循環移動とは構造移動以外の要因による人の階層間移動。
階層は歴史的に「職業」と結びついてきた。

・移動データが収集されてきたそもそもの目的は、マルクス主義的な階級対立の激化に沿う形で階層の固定化が進むのか確かめることにあった。

マルクス主義とは別の視点から、階層移動の長期的趨勢について予測した3つの代表的命題があった。 →LZ命題・FJH命題・産業化命題
しかしこれらも定義の不明瞭さで有力な理論にはなり得なかった。

 

2章:学歴社会

まとめ

①教育システムは、「学歴をてことする立身出世の道」をみなが達成すべき目標として位置づけ、社会レベルでの産業化を推し進めてきたが、産業化がある程度達成されて豊かさを皆が享受するようになったいま、存在意義を喪失しつつある。人々の間で、教育を通じての職業的達成という感覚が希薄化している。

(要は、今までは社会の定める出世街道みたいなものに乗ることイコール成功という図式が社会通念としてあり、教育もそこにおける個人的達成を正しいものとして後押ししてきたが、現代になって、教育のレールにのらんでも成功する道があるということを人々が見つけるようになったってこと。)

②データで見ると、学歴が職業選択に媒介することはむしろ、世代間再生産を弱める方向に作用している!(ブルデューさんごめん笑)
つまり高学歴化の進展が意味するのは、父世代が高学歴でなかった階層の子供が、ますます高学歴を所得できるようになっているということ。これは再生産に反する事態。

 

2章で押さえておくべき点

・歴史的に、学歴と職業の結びつきは強まりこそすれ、弱まりはしなかった。

・職業の階層性を「変革主体無きマルクス主義的階級論」として説明しようとしたのが「再生産論」

・学歴とは、平等性と身分制が両義的に結合しているもの。

・現実として、職業は人々の創造的能力に依存している以上、特定の学歴と職業が結びつくことに統計的相関があることは事実。

 

3章:職業と階層(めちゃめちゃデータ分析がうまい章)

まとめ

再生産論の限界を指摘!
出身家庭は、学歴や初職には影響するが、そのあとの職業キャリアにはほぼ影響しなかった!むしろ労働市場の構造の方が決定的に大事だった!
職業キャリアを規定する社会学的要因は、
①出身家庭
②学歴
③初職とその後のキャリア

 

3章で押さえておくべき点

・終身雇用が現代で続かない理由
終身雇用が社会的常識として定着したのは、高度成長期に、若手労働者の不足と技術革新を背景に、企業が大量のブルーカラーを社内に引き留めようと努力したから。
終身雇用は、特定制度の導入によるものではなく、歴史的・偶発的なできごとであるため、現代の社会状況ではそぐわないのは当然。

・転職の流動性・開放性を測る指標は、「個別開放性指数」と「対数オッズ比」

 

4章:変容する政治と階層意識

まとめ

①女性・マイノリティの考慮

②単なる「豊かさ」ではなく「公平感」がテーマに

③「アイデンティティのため」など、これまで社会的地位とは無関係と考えられてきた領域において地位獲得が目指されるようになった。(価値の相対化・個人化が背景!)

④「脱・階層」者の存在。
これまでの議論は誰もが高い地位を目指すことを暗黙の前提にしてきたが、地位思考を持たない人をあまり考慮してこなかった!(これも価値の相対化・個人化が背景!)

 

4章で押さえておくべき点

・原(著者)の枠組み
 階層意識は「政治意識系」と「満足意識系」の2グループに分けられる
→対立があるか否か、公的か私的か
・階級は周りとの関係から、後付けで立ち現れてくる

 ・各階層と政治は、一義的に結びつくわけではないから、常に経験的に語られるべき。かつての階層概念で切るのは古い!

5章:ジェンダーと階層

まとめ

ジェンダーとしての階層(男か女か)

ジェンダー中立的な階層(会社内の地位とか)

ジェンダー内階層(働くことに価値置くか、主婦に価値置くか個人で変わる)

女性の階層的地位は、学歴によってかなり規定されている点は男性と同様だが、男性と違って職業的地位だけのに還元しづらい。

 

5章で押さえておくべき点

・ある学歴以下の女性はしばしばある職業と明示的に結び付けられているという面において、ジェンダー間のライフチャンスの差は、高学歴な層において特に尖鋭に現れてくる。

・高度経済成長期の主婦化という現象は、女性を企業戦士のためのケアにさせていった「会社主義」の過程の別の現れであったといえる。

・女性自身の選好の在り方が大事!

・「性別」を階級として見る見方がある(一部のフェミニズム

・産業社会における、市場労働を通じての自己定立においては、女性は男性よりも総体として劣った地位にいることは否めない。

 

6章:新しい階層研究のゆくえ

まとめ

①階級
この概念が今まで有効だったのは、貧困などの問題を政治的な言説にのせるために、確定的な文脈で語られることが必要だったから。

②階層
利害対立に根拠を置く階級と違い、階層概念は生活世界の不平等をハイアラーキアル・集群的に説明するもの。だから不平等がなくならない限りある。


個人主義化と多元化の時代

①財や生活様式の「上下」に関する評価軸が人々の間で分化。→「階層がみえない」
②「達成としての階層」が個人主義化し、多様な生活様式がそれぞれ独自の意味を主観的に持つようになった。

 

階層論という学問の目的

人々の主観的な階層的意味世界に関して、その一般性、個別的構造、社会意識、制度や規範との関連をデータを用いて探り、解いていくこと。

 

でもこれって、データを適切に扱えないとそもそも意味ないし、ちゃんと扱えるようになるには時間がかかるんだろうな。でも、思ったのが、社会的意識なんて明確に定義出来ようがなくないか?ということ。同じ社会駅現象を見ても、人によって需要の仕方は違うし、偶発的な要因でいかにでも変わり得るじゃんか。あと、そういった社会的意識なんてもやっとしたものは、どの文脈でそれを置いて解釈するか(政治なのか経済なのか、、)によっても意味が確実に変わってくるわけで。じゃあ、そんな政治とか経済とかにとって人々の意識というものはいかにして関わってくるのかということを、次はルーマンの視点から考えてみようと思うのです!

 

現代社会の根底にある「何かもやっと定まらない感」の正体って何?

ってことを、システム論のニクラス・ルーマンの視点から考えていく!のが次回~